
勤務医って比較的収入は高いし、わざわざ事業まで持つ必要ある?

今の給料だけを見ると、そう思うかもしれません。でも僕が気になるのは、「これからも給与だけに頼って大丈夫か?」ということです。
勤務医は、比較的安定した給与を得やすい仕事です。それ自体は大きなメリットです。
ただ、「勤務医として働いていれば、今後も物価上昇に合わせて給与が増え続ける」とは限りません。
だから僕は、給与をもっと増やす方法だけではなく、給与以外の収入を自分で育てることにも意味があると考えています。その方法のひとつが、自分の小さな事業を持つことです。
ただし、最初に大事なことがあります。
所得区分は、自由に選ぶものではありません
ここでいう「事業所得を持つ」は、所得区分を自分で自由に選ぶという意味ではありません。
まず自分の事業を持ち、継続して収入を得る活動を行う。その所得が税務上「事業所得」に該当するかどうかは、活動の規模・継続性・営利性・帳簿保存など、実際の事業活動を踏まえて判断されます。
「節税したいから事業所得にする」という話ではありません。
勤務医の給与だけに依存するのが不安な理由
医師の給与そのものを、国が直接決めているわけではありません。ただ、病院の収入は診療報酬の影響を大きく受けます。
保険診療では、一般企業のように「原材料費が上がったから、来月からサービス価格を10%上げよう」と自由に価格転嫁できるわけではありません。
一方で、人件費・医薬品・医療材料・光熱費・設備費などのコストは、通常の企業と同じように上がります。
2026年度の診療報酬改定でも、「賃上げ」と「物価対応」が明示的な改定項目になりました。これは、医療機関が物価や賃金上昇の影響を受けていることを示すものと考えられます。
厚生労働省の医療機関の経営状況資料では、2024年度の医療法人病院の医業利益が赤字だった割合は58.9%。この資料の対象となった医療法人病院の過半数で、本業である医業利益が赤字でした。
もちろん、病院によって経営状況は違いますし、今後給与が上がらないと決まっているわけでもありません。ただ、物価が上がれば、それと同じペースで勤務医の給与も自動的に上がるという仕組みではありません。勤務先の継続的な大幅な賃上げだけに期待するのは、少し不安が残ります。

給与が悪いという話じゃないです。「収入源が勤務先ひとつだけ」という状態をどう考えるか、やね。
事業所得を持ちたいのは、節税のためだけではない
事業所得というと、「経費が使える」「青色申告で節税できる」という話が先に出てきがちです。でも、僕はそこが一番大事だとは思っていません。
一番大きいのは、勤務先とは別に、自分で収入を生み出す仕組みを持てることです。勤務医の給与は、勤務先で働いた対価として受け取ります。
一方、自分でWebサイトを作る、サービスを販売する、コンテンツを作る、何らかの事業を運営する。こうした活動では、何を作るか、どれくらい育てるか、どう改善するかを自分で決められます。
もちろん、簡単に収入が増えるわけではありません。失敗することもあります。でも、自分でコントロールできる収入源をひとつ持つ。この経験自体に価値があります。
このDrOptimizeも、給与以外の収入源を育てるための小さな事業のひとつです。
ただし、このサイトから生まれる所得が税務上必ず事業所得になる、という意味ではありません。事業所得に該当するかは、あくまで実際の活動状況をもとに判断されます。
給与所得・事業所得・雑所得は何が違う?
ざっくり整理すると、次のようになります。
| 所得区分 | 主なイメージ | 所得の計算 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 給与所得 | 勤務先から受け取る給与 | 給与収入-給与所得控除など | 勤務先との雇用関係 |
| 事業所得 | 自分で営む事業から得る所得 | 収入-必要経費 | 青色申告や一定の損益通算など |
| 業務に係る雑所得 | 事業規模に至らない副業等 | 収入-必要経費 | 赤字を給与所得などと損益通算できない |
※実際の所得区分は活動の実態によって判断されます。
給与所得にも、給与所得控除があります。また、一定の要件を満たす特定支出控除もあります。したがって、「給与所得には控除がなく、事業所得だけ経費が使える」という単純な話ではありません。
一方、事業所得では、その事業の収入を得るために必要な費用を必要経費として所得計算に反映できます。ここが大きな違いです。業務に係る雑所得でも、必要経費を差し引いて所得を計算します。
副業はいつ「事業所得」になる?
ここはかなり誤解されやすいところです。国税庁の事業所得と業務に係る雑所得の区分では、その活動が社会通念上「事業」といえる程度で行われているかで判断するとしています。
判断では、次のような点が総合的に見られます。
- 営利性・有償性
- 継続性・反復性
- 自己の計算とリスクで行っているか
- 活動の規模
- 帳簿書類の記録・保存
- 事業として利益を出すための活動を行っているか
つまり、「開業届を出したから事業所得」ではありません。「帳簿を付けたから事業所得」でもありません。「売上が300万円を超えたから必ず事業所得」でもありません。

先に「事業所得にしたい」と考えるんじゃなくて、まず事業としてちゃんと育てる。順番はこっちです。
金額や帳簿だけで決まるわけではありません
事業所得と雑所得は、単純な金額だけで線引きされるわけではありません。帳簿を記録・保存していることは重要な判断材料ですが、収入が僅少な場合や、毎年赤字なのに黒字化するための活動をしていない場合などは、個別に判断されます。
事業所得になると何が変わる?
事業所得に該当すると、税務上いくつかの制度があります。代表的なのが、必要経費、青色申告特別控除、一定の赤字の損益通算です。
ただし、事業所得になれば税率そのものが低くなるわけではありません。事業所得も給与所得も、最終的には他の所得と合わせて所得税を計算するのが基本です。
また、事業所得を持っただけで勤務先の社会保険から抜けられるわけでもありません。日本年金機構の標準報酬月額の説明でも、一定の条件を満たす被用者は会社から受ける給与・手当などの報酬をもとに保険料の基礎が決まるとされています。
この記事では、「事業所得=税金と社会保険料を回避する方法」とは考えません。重要なのは、事業を行ううえで実際に必要だった支出を正しく所得計算へ反映できること。そして、青色申告などの制度を正しく利用できることです。
必要経費なら、何でも落とせるわけではない
事業所得は、総収入金額-必要経費で計算します。
計算の基本は国税庁「事業所得の課税のしくみ」で確認できます。
国税庁は必要経費を、収入を得るために直接必要な費用や、販売費・一般管理費などの業務上の費用としています。
たとえばWeb事業なら、次のような支出が候補になります。
- サーバー代
- ドメイン代
- 事業で使うソフトウェア
- 業務用PC
- 事業に必要な書籍
- 外注費
業務用PCなどの資産は、取得価額等によって減価償却などの処理が必要になる場合があります。
一方、「個人事業主だから何でも経費にできる」わけではありません。生活費や完全な私用の支出は、必要経費にはなりません。
自宅家賃や通信費のように私生活と事業の両方で使うものは、取引の記録などに基づき、事業に必要だった部分を明確に区分できる範囲だけが対象です。詳しくは国税庁「必要経費の知識」をご確認ください。

「経費にできるものを探す」より、事業で必要だった支出をちゃんと記録する。この考え方の方が分かりやすいです。
青色申告にはメリットがある。でも「65万円得する」ではない
事業所得を得る事業を行う場合、一定の手続きを行って青色申告を利用できます。2026年分までの制度では、条件を満たすと青色申告特別控除は最大65万円です。
65万円控除の主な要件は、次のとおりです。
- 正規の簿記の原則、一般的には複式簿記で記帳
- 貸借対照表・損益計算書を作成
- 期限内に確定申告
- e-Taxで申告する、または一定の電子帳簿保存の要件を満たす
ここで大事なのは、65万円もらえるわけではないということ。所得から最大65万円を控除できる制度です。実際の控除額は所得や要件によって変わります。「65万円×自分の税率だけ必ず節税できる」と単純に考えない方がいいです。
なお、国税庁は2027年分以後、青色申告特別控除について制度変更を案内しています。一定のデジタル要件を満たす場合には最大75万円となる制度が予定されています。制度切替時期なので、実際に申告するときはその年分の国税庁の最新案内を確認してください。
事業所得の赤字は損益通算できる場合がある
事業所得の特徴のひとつが損益通算です。国税庁は、不動産所得・事業所得・譲渡所得・山林所得の一定の損失について、他の所得と損益通算できる制度を設けています。
一方で、雑所得の赤字は、給与所得など他の所得から差し引けません。これは事業所得と雑所得の大きな違いです。対象や例外は国税庁「損益通算」で確認できます。
ただし、「給与と相殺したいから赤字事業を作る」という考え方は本末転倒です。事業は本来、利益を出すために行うものです。
毎年赤字で、黒字化するための活動もしていなければ、そもそも事業として認められるかという問題にもつながります。
損益通算は、真剣に事業を行った結果として生じた損失について存在する制度と理解しておく方がいいと思います。
勤務医が小さな事業を持つなら、まず何を目指す?
最初から会社を作ったり、大きな資金を用意したりする必要はありません。まず考えたいのは、自分で売上を作る経験をすることです。
- Webサイト
- コンテンツ販売
- 小さなWebサービス・アプリ
- コンサルティング
- その他、自分の知識や仕組みを使った事業
大事なのは、「経費を使うこと」ではありません。売上を作る。記録する。改善する。継続する。この流れを作ることです。
売上が生まれ始めたら、事業用口座・事業用カード・会計ソフト・帳簿を私生活と分けていくと、かなり管理しやすくなります。
実際に個人事業を始めるなら、最初に口座・カード・会計ソフト・帳簿を分けておくと、後の管理がかなり楽になります。具体的な整え方はこちらでまとめています。
給与を増やす方法と、事業を育てることは別
勤務医が収入を増やすなら、当直を増やす・外勤を増やす・スポットバイトをするという方法もあります。これは即効性があります。僕自身、スポットバイトは収入を増やす方法として合理的な選択肢だと思っています。
ただ、働く時間を増やして給与を増やすことと、自分の事業を育てることは、役割が違います。
前者は比較的すぐ収入につながります。後者は、収益化まで時間がかかることもあります。
でも事業は、自分で改善できる。仕組みにできる。将来的に自分が働いていない時間にも価値を生む可能性がある。という違いがあります。
すぐに収入を増やす選択肢を探している人はこちら
まとめ|給与以外の収入源を、自分で育てる
勤務医の給与は、比較的安定しています。だから、給与所得を否定する必要はありません。
ただ、病院の収入は診療報酬の影響を大きく受け、物価上昇をそのまま自由に価格転嫁できる業界でもありません。これからインフレが続いたとき、勤務医の給与が同じペースで上がり続ける保証もありません。
だから僕は、給与を増やすことだけではなく、給与以外の収入源を自分で育てることにも意味があると思っています。
そのために自分の事業を持つ。売上を作る。帳簿を付ける。利益を出すために改善する。
そして、その活動の実態が税務上の事業所得に該当するなら、必要経費、青色申告、損益通算などの制度を正しく使う。
順番は、「節税したいから事業所得」ではありません。事業を育てる。その結果として事業所得に該当する実態を備える。です。

給与を捨てる必要はないです。安定した給与を持ちながら、もう一本、自分で育てる。僕はこの形が一番強いと思っています。
まずは、自分で売上を作れる小さな事業をひとつ考えてみる。
本記事は税制度についての一般的な情報を、国税庁などの公的情報をもとに整理したものです。
実際の所得区分や必要経費、青色申告の適用可否は個々の状況によって異なります。具体的な申告について判断に迷う場合は、税務署または税理士へ確認してください。



コメント